2月23日はセミナー2日目第3講演をレポートします。
「新規就農から次の飛躍をめざして」と題して有限会社中札内レディースファーム代表長谷川氏の講演は、とかくこのような会でありがちな「成功例」ではなかった。彼はまさに現在進行形で存続の格闘中であり、しかし、そのユニークさは他に例を見ないものだ。現在51歳で会社は酪農だ。関西出身。一時農業にあこがれるも何度か断念。職をいろいろ変えた。ある商社では、20歳代で店長になり、慢性赤字部所であったが、持ち前の度胸で顧客を開拓し、黒字にこぎつける。しかし、他からのねたみもあって転職。病院事務などもやった。彼はいろいろ職を変えたが、すべて現在に役に立っているという。「レディースファーム」の名づけは、女性でも好きであれば農業が出来る!との思い。
女性が新規に農業を職業として選ぼうとしたとき、手っ取り早いのは農家の嫁になる事だ。しかし、それで本当に幸せかと疑問を持つ。誰でも性別も無く平等に職業を選んでよいはずだ。そこで、長谷川代表は、「嫁」にならなくても能力次第でだれでも農業を選べるようにと、法人化にしたという。
しかし、いざはじめると大き目のトラブルが発生、結局「じゃーみんなでやめようよ」と一斉に従業員がいなくなり、一人で24時間働た経験談を話していただいた。理想と現実のギャップはまだ大きい。
長谷川さんは、誰もやっていない「無殺菌牛乳」に挑戦した。ドイツでは給食に使われている無殺菌牛乳だが、日本では認知度はゼロだ。酪農家でさえ、自分で搾乳した牛乳は一度沸かしてから飲んでいるくらいだ。しかし、熱殺菌をすると牛乳成分が変化し、味、栄養摂取割合、有用微生物の低下が避けられない。生で飲むことが出来ないのは、雑菌混入があるからであって、これを徹底的に抑えれば、熱殺菌しなくても飲むことが出来るし、栄養成分や本来の味も損なわれない。それには、牛や牛舎の徹底的な洗浄をする必要があり、ビン詰めも無菌室の工場が必要になる。
それらをクリアしても尚、販売するには保健所の許可が不可欠。しかし、前代未聞の挑戦は簡単なものでなかった。3年の歳月とのべ1000枚を超える書類を書き続けて、ビンの大きさなどの条件付であるが、販売できるようになった。
しかし、これだけの労力をかけて商品化した牛乳も、利益を出すためには、相当数を売らなければならない。そこで、わずかに宅配していたのに加え、商社に委託した。これだけの自信作が売れない訳が無いと誰しもが思っていた。だが、商社の強気の販売戦略が失敗。長谷川さんの会社は窮地に追い込まれている。やはり、自分で売ろう!。
彼は、新規就農時も実習時も地元同業者からも大きな心の支援を受ていた。その恩返しをする意味でも、ここでつまずいてはいけないとの強い思いがある。今彼は、東京や大阪へ飛びまわり、一からセールスして回っている。
彼の模様は、テレビで追跡取材されている。4月3日18時TBS「夢の扉」で放送予定だ。
づづく