【低農薬に取り組む】
近年の消費者志向は健康ブームに代表されるように、食べ物にも機能性を求めていたり、安全性を加味するようになりました。全国の果樹園では、どうにか農薬を軽減しようとの取り組みがなされています。
そもそも、最北産地増毛町での果樹への薬剤使用は、生育期の冷涼さから害虫の発生が比較的少なく、増毛での農薬使用数・量は、全国比50?70%です。それでも尚、農薬の低減をしようとする取り組みが、数年前から行われています。
害虫の発生は雌雄の出会いで増加しますが、その際の交信として雌の出すフェロモンが作用しています。そこで、人工的にそのフェロモンを果樹園内に蒸散させれば、オスとメスの出会いが阻害されます。
20センチくらいの針金状の管に複数の害虫のフェロモンが封入された製品が販売されています。この製品は、小規模では効果が薄いため、出来れば地域全体で取り組む必要があります。増毛では、より多くの賛同者を得てこの製品を導入して、殺虫剤散布の軽減をしました。
同時期、北海道では、安心安全な作物生産団体に対しての認証制度Yes Cleanが始まり、増毛の果樹園もいち早くその認証を受けました。
【自然と一体の農業】
防風林植栽や雨よけハウスの設置比率が向上したとは言え、果樹はやはり自然に左右される産業です。開花期の温度によって受粉を助ける訪花昆虫の動き次第で結実量は大きく変わります。生育期の温度によっては収穫期が早まったり遅まったりしますし、果実肥大も影響されます。降雨による高湿度は、生育初期から収穫期まで病害虫の発生を激化させますし、強風は、落果を招きます。果樹園は、自然の気候と一体で過ごしているのです。
そもそも果物は、人間が生きていく上で不可欠な物ではありません。しかし、果物を食する事は、ちょっとした贅沢感だったり幸福感だったりするはずです。そういう意味からすると果樹園は、「おしゃれ」な業種かも知れませし、そうだとすれば果樹園は、より一層の高品質な果物生産をしなければならないでしょう。
果樹は稲作と違い、機械化はさほど進んでいません。せいぜい農薬散布や草刈くらいのもので、収穫や管理作業は相変わらず手作業となります。その為、大面積経営は難しいのです。高品質生産を目指す上では尚更です。