【不可欠となったさくらんぼ雨よけ施設】
そこで、降雨からサクランボを守るには、「雨よけハウス」の導入が不可欠となってきたのです。雨よけハウスは、科学技術の進んだ現在でも、画期的な方法がなく、相変わらず命がけとなっています。当初、一本一本だけ掛かる「傘」的なものでしたが、さくらんぼの面積が増えてくると、大規模に施設になっていきました。しかし、これといって楽に被覆できる設備は考えられておらず、現在のさくらんぼ雨よけハウスは、普通のぶどう用のハウスの足を長くした代物です。
さくらんぼの性質は、りんごよりも上部に延びようとしますので、その分余計に高さを必要とし、被覆作業は地上約4メートルの細いパイプの上をサーカスのように歩いて作業します。被覆期間は、さくらんぼが熟して収穫するまでの期間で、約1ヶ月間です。雨よけハウスは、補助対象になり、被覆率が一気に上りました。
【販売形態の変化】
果樹園の経営は、もともと「りんご」から始まった訳ですが、現在では、さくらんぼ、洋梨、ぶどう、プルーンなどへと、その樹種を増やしています。
果樹園での販売形態は、農協を中心とする出荷も多くありますが、交通が容易になり、国民の余暇が増えてくると、消費者が直接果樹園に買いに来るようになります。果樹園では、昔から自分で売っていた下地がありますので、当然直売に応じるようになります。そこで、さらに多くの方を呼ぶべく「観光果樹園」も登場するのでした。
市場は昔から今でも、「買い手」が値段を決めます。需要が多い時は値段は上がりますが、供給過多の場合、当然価格は下落します。そこには、流通論理が優先され、その物に対する生産原価や生産に込める思いは微塵も入れられず、単なる貨幣価値のみで取引されます。
生産者が直接販売する場合、市場価格も考慮しますが、当然自分で価格を決めます。品種や選別で価格差をつけたり出来ます。また、消費者と直接会話も出来て、生産物への熱い思いや食べ方などの細かな情報も伝えることが出来ます。また、消費者の望んでいるいわゆるニーズも把握できるのです。そういう一面から、生産物の多様性も生まれてきたのだと思います。